ちゃっぴーの雑記帳

香川県で細々と演劇したりダンスしたり観劇したり本を読んだり映画を見たり……日々の思いや考えを綴っていきます。

「乱歩之回-江戸川乱歩戯曲短篇蒐-」終演

株式劇団マエカブ・劇団まんまる合同

「乱歩之回-江戸川乱歩戯曲短篇蒐」

2019年6月15・16日@ヨコクラうどん

2019年6月22・23日@大正館

 

無事に両日ともに終了いたしました。

ご来場いただいた皆様、また、いつも応援していただいている皆様。

本当にありがとうございました。

 

何となく感想をつらつらと綴っていこうかと思います。

 

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江戸川乱歩」はずっと前から再挑戦したかった題材でした。

最初に江戸川乱歩之作品を舞台にあげたのは「ひとでなしの恋」でした。

人形に恋をする男の話で、じっとりと気味悪く、でも、幻想的で美しい話でした。その時は演出・脚本・舞台美術・音響の役割がきっちりとしていて、本当にそれぞれの「性癖」を煮詰めて詰め込んだ舞台作品に仕上がったと思います。あの時の快感が忘れられず、いつか再挑戦する日を今か今かと待ち望んでいました。今でも、あの時の「ひとでなしの恋」は録画していたので観ることがあります。稽古も大変だったし、お互いの「思い」をどこまで整理して舞台に上げるかは議論もしましたが、うまくかみ合っていたと思います。

多分、あの瞬間に江戸川乱歩に魅入ったのだろう。私の中で離れがたいモノになってしまいました。

 

さて、今回の「乱歩之回」は6つの作品を上演しました。

 

「赤い部屋」:江戸川乱歩作品紹介「赤い部屋」 - ちゃっぴーの雑記帳

「お勢登場」:江戸川乱歩作品紹介「お勢登場」 - ちゃっぴーの雑記帳

「百面相役者」:江戸川乱歩作品紹介「百面相役者」 - ちゃっぴーの雑記帳

一人二役」:江戸川乱歩作品紹介「一人二役」 - ちゃっぴーの雑記帳

「指」:江戸川乱歩作品紹介「指」 - ちゃっぴーの雑記帳

「火星の運河」:江戸川乱歩作品紹介「火星の運河」 - ちゃっぴーの雑記帳

 

どういう作品かは上記のリンクから辿ってもらえたら詳しく書いております。

 

  • 赤い部屋

原作は男のひとり語りですが、お芝居にしたら結果、多くの人間がステージにおりました。何と、ひとり芝居なのに一番、多くの人数が舞台にいたらしいです。どういうこと!?

まぁ、それは「赤い部屋」という集まりの人間達が舞台上にいたということです。原作はひとり語りですが、退屈屋の人たちに自分の身の上話をしている、という構造なのです。

私自身が演者のRINのファンですので、同じ舞台に立っているのに観客と同じ目線で作品を観れたというのは、何とまぁ贅沢なことなんでしょう。やっぱり上手だな、と思います。観客に向ける目、そして共演者に向ける目、何もない空間に向ける目。目線の振り方が抜群です。その中に意味のない動きはなく、計算されているようだけれど、きっと感覚でやっているのかな?と思います。

私のイメージの赤い部屋の男は、もうすぐアヘンによって命を取られてしまうような「病弱」な男でした。しかし、もっと生命力に溢れていました。それもよくよく考えると、「嘘」なのかと思ってきました。彼の話は何が「嘘」で何が「本当」かわからないんですね。嘘も本当も全て煙に巻かれる。だから「アヘンによって命を取られる」というのも、実は嘘なんじゃないか?と考えさせられます。そこまで言及されているわけではないので、想像ではありますが。

原作も最終的には空虚な空間が残るような感覚がしたので、上手にドラマチックな空間を空白にしたな、と思います。

 

  • お勢登場

これは株式劇団マエカブ勢が香川公演は出演して、徳島公演は格太郎が交代しました。そうですね、ダブルキャストですね。香川公演終了後の一週間で格太郎を作り上げた「テアータ80’」の藤本さんは恐ろしいなぁ、と思います。

今回の芝居のキーとなるアイテムが「長持」です。しかし、実際に長持を持ち込んで芝居をするのかしら?と思っていたのですが、これが演劇の面白いところですね。「長持」は「布」で表現されていました。これにより、実際に長持の中に閉じ込められた格太郎の苦痛や息苦しさをより鮮明に感じることができていました。これに光を当てるのは、まぁ、楽しかったですよね。

私の役どころは特に物語に特別な影響を与えるわけではないので、割と外側から見ることができました。まぁ、あれですね、華のある役者はいいなぁと思っていました。それぞれの華が噛み合うことはないが、それぞれに輝きを放つことによって相乗効果で上がっていく感じ。そうだよね。演劇は相手がいて、お互いに引きあがっていくものだよね、って思いながら見ていました。

私は明智小五郎関係の作品は読んだことないので、そんなに彼につて思い入れはないのですが、この作品で「明智小五郎対お勢」を観ることができて、きっとファンは嬉しかったりするのかな?と想像します。

 

  • 百面相役者

トリッキーで意味不明で、でも楽しい作品に仕上がっていました。原作を読んだ時は、ただただ気持ちの悪い作品だと思っていたのですが、舞台作品にしたら変わってきますね。言ってること気持ち悪いのですが、よくわからないのですが、楽しいんですね。

小劇場作品っぽい感じがしました。「後ろを向いたら存在しない」「舞台を一周したら場面が変わる」というような、演劇の嘘の約束事を詰め込んだ感じで、お芝居として個人的に一番好きな作品です。その嘘を観客に強いるわけではなく、それを自然に魅せてくれるので面白かったです。

そして、登場自分つの頭のおかしい感じも好きでした。いや、普通はさ「一般人と頭のおかしい人」という図式じゃない、一般的には。でも、「頭のおかしい人と頭のおかしい人」という地獄絵図のような状況が生まれており「これはいったい、何を見せられているのだ?」という感覚に陥っていました。

でも、キャラクター芝居かとったら、そうではなくてタイミングや動きがスムーズで相当に稽古を積んできたのだということを感じました。

 

これもある意味「演劇らしい」作品だったと思います。会話劇っぽいところから、落語・歌舞伎・弁士っぽくなり、観客と舞台の境界を消すことを意識したり。

私は演劇は「関係性」によって成り立っていると思っていて、それは役者対役者の関係性のみだと思っていました。しかし、今回は「対観客」を意識する必要があり、個人的には相当な鍛錬になりました。今でもできていたかは疑問ですが、私なりにバリアーを解いて開いた状態を作って、降りて行ってみたものの……私の中にある「観客席は安全圏域」という意識を取っ払うのは相当な時間がかかりました。

でも、本番を重ねるにつれて、その意識は消えないのですが、自分の考える「安全圏域」と考えない人を意識的に発見することができたような気がします。それは、今後の演劇人生の中に役に立つ発見でした。

会話劇っぽい感じなので、その辺りはとても好きです。

ひとり語りはもっと練習しなくちゃなぁ……と思う反面、楽しかったのも事実です。

 

出演者でもないのに、相当台詞を繰り返した作品でした。声や言い方が耳に残るんですね。個人的に「声で芝居をする」ということに関して物凄く抵抗感を感じてしまうのですが、今回はスムーズに入ってきました。

元々が10分程度の短い作品だったのに、そこから構想を得て増幅させる脚本の力を感じる作品で、なおかつ客席を含めた空間を埋めるように動く役者の演出にはさすがだなぁ、と思いました。

私個人は一番「乱歩っぽい」と感じる作品でして、クラシカルで静かで美しい作品でした。ずっとバックにベートーベンの「月光」が流れており、感情の高ぶりとリンクしており、その脚本の為に作られたのではないのか?と思うような仕上がりでした。

 

 

無事に香川・徳島間を走り切ることができてよかったです。

私個人も役者としても、その他の立場としても成長することができた企画でした。特にスイッチの切り替えには苦労を要しましたが、これがどこかで役立つことを祈っています。

 

お越しいただいた皆様。

応援してくださった皆様。

そして、お手伝いいただいた方々。本当にありがとうございました。