2019年9月15日(土)16:00~
カブフェスで観劇した燐光群の「あい子の東京日記」の観劇記録。
作・演出:坂手洋二
出演:中山マリ
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「燐光群」とは
1982年に創立。
主催の坂手洋二の作・演出を中心に社会性・実験性の高さと、豊かな表現力を兼ね備えた、斬新で意欲的な新作公演を重ねている。
国内で年3~5回本の公演・ツアーの他、「神々の国の首都」「屋根裏」等で海外16カ国29都市の公演を行う。
2002年「最後の一人までが全体である」では第10回読売演劇大賞優秀作品賞。
2004年「だるまさんがころんだ」では第12回読売演劇大賞選考委員特別賞。
私が生まれる前から劇団として活動している、バリバリの劇団さんです。
海外公演の経験もある実力派です。
主催の坂手洋二さんは岸田國士戯曲賞も受賞されており、物凄い方……というか、日本劇作家協会元会長だったり、日本演出家協会副理事長だったりと……いやはや、恐れ多いです。
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感想
「中間小説」の人気作家として一世を風靡した、中山あい子。
娘・中山マリが、母を、母のいた世界を、母から見た自分を語り、そのすべてを演じます。
きょう話したいのは娘のことだよ。私?あい子さ。
上記のあらすじをみたら、もう観劇しなきゃ!という気持ちにさせられました。
私は「中山あい子」さんのことは全く知らない。知らないけれど、見なきゃいけない気持ちにさせられるあらすじでした。不思議なもので。
燐光群の「中山マリ」さんが母と娘になって語る「ひとり芝居」。
炬燵がない時代に電球を仕込んで炬燵にしたりするユーモラスなお人柄。
しかし、戦後の大変だった時代に母一人で娘の「中山マリ」を育てて……って、あれ?
中山あい子の娘さんって、中山マリじゃなかったっけ?
と思って調べたら、何と驚くことに本人だったんですね。
これを芝居にするって、いや、凄いです。
お芝居する上で、その役に付いて調べたり考えたり、そして、近づいていくことはもちろん役者ならみんなすると思います。
するけれど、役作りとは意味が違いますよね。
自分を自分が演じ、記憶の母を自分が演じる。
私なら絶対に逃げ出したくなる。
生半可な思い出は絶対にできないであろうひとり芝居だと思います。
母も娘もどこかぶっきらぼうで言葉が足りない感じがする。
それでも、ふたりが支え合って東京の片隅で生きている。
特に印象深かったのは「流産する努力をしたが、あなたが生まれてきた」という下りのお話。
ふたりの素直になれない感じが面白おかしい反面、そこまで過酷な時代だったのだと思い知らされます。
ぶっきらぼうで飄々とした演技の中に、ふとした瞬間に現れる優しい空気。
その瞬間がとても好きなお芝居でした。
瞬間的に場の空気感を一気に変える、とてもいい役者さんです。
あいにく、最後の最後は観ることが叶わなかったので、いつか、もっと集中して観劇したい作品です。