2018年1月3日に鑑賞。実は2回目。
「安藤サクラ」という女優を知ったきっかけとなった作品。
サクセスストーリーのようで、実は何も成し遂げられない。
でも、最底辺だけれど、登っていけるような希望を感じさせる映画。
- ストーリー
32歳の一子(安藤サクラ)は実家にひきこもり、自堕落な日々を送っていた。
ある日離婚し、子連れで実家に帰ってきた妹の二三子と同居をはじめるが折り合いが悪くなり、しょうがなく家を出て一人暮らしを始める。夜な夜な買い食いしていた百円ショップで深夜労働にありつくが、そこは底辺の人間たちの巣窟だった。
心に問題を抱えた店員たちとの生活を送る一子は、帰り道にあるボクシングジムで、一人でストイックに練習するボクサー・狩野(新井浩文)を覗き見することが唯一の楽しみとなっていた。
ある夜、そのボクサー・狩野が百円ショップに客としてやってくる。狩野がバナナを忘れていったことをきっかけに2人の距離は縮めていく。なんとなく一緒に住み始め、体を重ねるうちに、一子の中で何かが変わり始める―――。
脚本は足立紳さんっていう「第一回松田優作賞」という賞のグランプリ作品らしいです。山口県周南映画祭というで新設された賞らしいですね。知らなかった。
- 感想
何がいいって、やっぱり安藤サクラの演技力だと思います。
最初はずーっと実家でダラダラと親のすねを齧って生きている女性を演じているのですが、その演技がとてつもなく自然。言葉が出てこない感じとか、突然怒り出す情緒不安定さ。家を出てアルバイトを始めた当初のブツブツと言葉を何とか紡ごうとしている感じ。同棲を始めたときの妙な乙女な感じ。ボクシングを初めて段々と変化していく様。体系の変化と共に一子が段々と変化していく様子が見えるんです。
自然な演技の中で、一子と安藤サクラ、両方の意思が見える感じがしてとても興味深かったです。
プロテストも合格して、偶然だけれど試合もできるようになって。
でも、結局、その試合は負けてしまうんですけれど。負けてしまうんですが、その試合の中で見せる生き様というか、凄みというか。
スポーツを見て感動したりするのって、試合の勝敗も関係するのかもしれませんが、そういう命を削って積み重ねてきた人たちの生き様が見え隠れするからなのかもしれません。
特に印象に残ったのは、試合が終わって帰るとき「勝ちたかった。一度でいいから勝ちたかった」という言葉を一子が泣きながら発した瞬間でした。
映画の中ではこの人の過去は語られることはないのですが「一度でいいから」ということは、ずーっと負け続けの人生だったんだと想像できます。
そんな中でやっと見つけた一つの光明だったけれど、結局、負けてしまう。じゃあ、何が残ったのか?と問われると、何か目に見える形として残ったものはないのかもしれない。しれないけど、少なくとも一子の手の届く範囲では何かが変化したのではないかと感じさせらえれました。それが、狩野が「飯食いに行くぞ」と手を引いていくシーンでした。
底辺は底辺なのかもしれない。
でも、一子の周りが少しの間だけでもいいので、うまく回ればいいな。
そんなことを感じる映画でした。
本当。同じくらい必死に生きないとな。