2019年1月26日
高松市内で研修があって、それが終わった後に、久しぶりに高松ソレイユで映画を見てきました。
時々、単館系の映画が見たくなるんです。
香川県にはソレイユしかないので、そこに見に行きます。
サブカル系にとっては単館系の映画館はすごくいい空間なんです。もちろん、作品もマイナーではあるけれど、とても面白い作品が多いのです。
もちろん、イオンシネマとかも行くのですが、ひとりでじっくりと考えたい時や物語に浸りたいときは圧倒的にソレイユを利用します。
- 『ぼけますから、よろしくお願いします』とは
母、87歳、認知症。父、95歳、初めての家事。
広島県呉市。この街で生まれ育った「私」(監督・信友直子)は、ドキュメンタリー制作に携わるテレビディレクター。18歳で大学進学のために上京して以来、40年近く東京暮らしを続けている。結婚もせずに仕事に没頭するひとり娘を、両親は遠くから静かに見守っている。
そんな「私」に45歳の時、乳がんが見つかる。めそめそしてばかりの娘を、ユーモアたっぷりの愛情で支える母。母の助けで人生最大の危機を乗り越えた「私」は、父と母の記録を撮り始める、だが、ファインダーを通し、「私」は少しずつ母の変化に気づき始めた…
【公式サイトから引用】
もう、予告編だけでも「うっ」となっていたのに、本編を見たら、もう、涙が溢れて止まりませんでした。それで、本編見た後に予告編を見ると、また、「うっ」となります。
- どんな映画?
監督の信友直子さんが「監督・撮影・語り」を担当しているドキュメンタリー映画です。
監督は日ごろから映像制作に携わっていて、数多くのドキュメンタリー番組に携わっているそうです。また、現代社会の一面を切り取る作品が多いみたいです。だから、現在の日本が抱えていて、これから先も問題になってくるであろう「老老介護」の実態を切り取ったのかもしれません。
しかし、ひとつだけ違うのは、自分自身の両親を切り取っているところ、なのかもしれません。
私がドキュメンタリー作品を見たのは、それこそ高松ソレイユで「フジコ・ヘミングの時間」を見たのが最後だったと思います。
ドキュメンタリー映画は好き嫌いがあるジャンルだと思います。私は凄く好きなジャンルなんですけれどもね。
- 感想は
単純に「見てよかった」と心から思いました。
ドキュメンタリー映画がなので「今、ここで」起こっていることがファインダー越しに見えるわけです。もちろん脚本なんてないので、大きな出来事がボンボン起こったり、感動的なオチがあるわけではないです。ただただ、この夫婦と娘の日常がそこに映し出されているだけです。それが苦手な人もいると思います。
でも、それでよかったし、それがよかた。
凄く当たり前の「老いていくこと」がここにはありました。
元気で綺麗な服を着て、背筋もしっかりと伸びて、はきはきとカメラに向かって受け答えをしている父と母。そんな元気だった父と母が、髪は真っ白になって、腰も曲がって、身なりも以前と比べたらちゃんとしてない。しかし、そうやって、年齢を重ねたって父と母のふたりが一緒に寄り添って歩いている姿が、とても感動的でした。
認知症の初期症状が出だしたときには「いかんのよ」「ボケてしまっよんよ」「どうしてかなぁ」と言っていた。
段々と身体もしんどくなっていくのか、洗濯物の上で横になってしまったり、朝に起きることができなくなったり。
最後の方では泣きながら、自分ができなくなっていく事に対して「家族が私を必要としてない」「死んでしまった方がましだ」と叫びながら訴えてきます。
そんな風に変化していってしまう母に対して父が「気位が高い」と叱責したりする。
でも、そんな激しい怒鳴り合いの喧嘩をしても、布団の中から泣きながら父に助けを求めて手を伸ばして。それを耳の遠い父は何かを感じて、手を握ってあげるシーンとか、もう、凄く胸が締め付けられます。
私はずっと福祉の勉強をしてきて、そんな人たちの為に利用できるサービスや介護保険制度の仕組みなどは、他の人たちに比較して知っています。
知っていますが、そういう問題ではないことをひしひしと実感します。
母と父が生きてきた歴史。それをひっくるめて支援する必要があるのだな、と凄く凄く実感しました。
人間として、いや、動物としてこの世に生まれてきたからには「老いる」ということは、普遍的なことで誰も逃れることができない運命なんだと思います。
そんなことをありのままに映し出しています。
老いることは美しいことではない、けれども、醜いわけでは決してない。
年を取ることによって頭と身体が段々と衰えていく。
そんなことは、もう、わかりきっている。
でも、私たちは「知識として知っている」だけで、自分自身のことであると本気で思ったことがないと思う。もちろん、私も。
この映画はそんな「他人事」を「自分事」にしてくれます。
評価するわけでもない。ただ、見つめる映画だと思います。
この家族が幸せであってほしい。
そして、この映画を見た人たちが感じて、心の片隅にでも記憶してくれていたら、きっと少し世界は優しい方向に向かうのではないかと思う。
はっきり言ってみるのがかなり辛くなる映画。
だけれど、目をそらさずに、ありのままの事実を見てほしい。少しでも多くの人に。
そう、感じます。