「オカマだけどOLやってます。完全版」
作:能町みね子
2009年初版。
その頃はまだまだLGBT(最近はLGBTQ+って言うのかな?)という言葉が世間一般に普及する前のこと。
そんな中、この本を手に取った。
「能町みね子」とは
文字書き&イラスト描き。
「自称漫画家」という肩書を持つ。
漫画家の久保ミツロウと「俺たちデトックス女子会」というPodcastを配信していて、笑いをこらえながら通勤中に延々と聴いていた。
文章も喋りも面白い。そんな印象。
2010年から4年間、私の地元のサッカーチーム「カマタマーレ讃岐」を取材していたみたい。
えー、知らなかった。勝手に親近感がわく。
「オカマだけどOLやってます」とは
タイトルを観た瞬間は「?」となる。
2005年に開始したブログ「オカマだけどOLやってます」を書籍化したものになる。
2007年には性別適合手術(心の性に身体を合わせる手術)を受けています。
本書は「幼少期から性別適合手術を受けるまでの間」が書かれている。
読み始めたきっかけ
私がこの本を手に取ったきっかけは「自分が自分に感じている違和感」だった。
「性別」という範囲では括ることができない何かを感じていた。
自分自身は男性として生活をしている。
でも、性自認(自分が自分の性別をどのように思っているか)が100%男性か?と自分に問うても「何だか違う気がする」と思っていた。
じゃあ、性的指向(恋愛の対象がどこに向かうのか)が100%女性に向くか?と問うても「何だか違う気がする」思っていた。
今となってはLGBTの認識や理解が広まってきているが、この本が出版された2000年代は社会的認知度は物凄く低かった。
そんな時代に出版された本である。
感想
ブログ形式なので1項目が短くてサラっと読める。
なおかつ、1項目に1つイラストが入っているのでそれも面白い。
文章読むのが苦手な人は、サラサラとイラストを見て、気になった個所を読むという方法もあるかもしれない。
LGBT関係の本は(私の知っている範囲では)学術書みたいなのが多くて、とっても堅苦しいものだった。
だから、読んでいても理解はできても「自分事」として落とし込むことができないでいた。
でも、本書は「もしかしたら自分の周りにこんな人がいるのかもしれない」と思わせてくれる。
ちょっとした秘密を持ちながら、
ちょっとした苦労を抱えながら、
ちょっとした違和感を覚えながら、
こんな人が隣にいるのかもしれない……と笑いながらもドキッとする。
読み終えて
私は私が抱えていた違和感に過剰に反応していただけかもしれないな、と感じた。
無理矢理にカテゴリー化しなくても「人と人とは違って当然」くらいの認識でいるべきなのかもしれない。
全くの無関心でも、過剰に理解することもいけない気がした。
関心を寄せながら無関心でいること。
これも、ひとつの人間関係のあり方なのかもしれない。