2020年3月1日(日)
開校100年 きたれ、バウハウス ー造形教育の基礎ー
前知識も何もない。
ただ「ポスターに惹かれた」という理由で見に行った。
かなりシンプルに見えるけれど、そこにある「基礎力」と「思考力」を垣間見る事ができる展示だった。
「バウハウス」とは
1919年、ドイツの古都ヴァイマールに、建築家ヴァルター・グロピウスにより造形学校「バウハウス」が開校され、昨年、その誕生から100年を迎えました。ナチスの弾圧を受け1933年に閉鎖されるまで、わずか14年という短い活動期間でしたが、実験精神に満ちあふれたこの学校は、造形教育に革新をもたらし、今日にいたるまでアートとデザインに大きな影響を及ぼしています。
バウハウスでは、ヴァリシー・カンディンスキー、パウル・クレーなど時代を代表する芸術家たちが教師として指導に当たって、優れたデザイナーや建築家が育ち、画期的なデザインが生まれました。とりわけ入学した学生が最初に受ける基礎教育で教師たちが試みた授業はユニークなものでした。
(高松市美術館HPより引用)
1919年~1933年のわずか14年間。
たった14年間だけれど、その中で先進的・実験的な取り組みが行われていた。
展示室前にバウハウスの年表があったが「え?こんだけ?」ってくらい短期間。
でも、その間に芸術家達に与えた影響は計り知れない。
「開校100年 きたれ、バウハウスー造形教育の基礎ー」とは
本展覧会では、バウハウスの基礎教育を中心に各教師の授業内容を紹介するとともに、その一端を体験していただけます。さらに、そこから発展した様々な工房(金属、陶器、織物、家具、印刷・広告、舞台など)での成果や資料など約300点を展示。また、実際にバウハウスに入学した日本人留学生・水谷武彦、山脇巌、山脇道子、大野玉枝、4名の活動を一同に紹介する初めての機会となります。
(高松市美術館HPより引用)
作品展示だけではなく、バウハウスが辿ってきた歴史を見ながら、どのような基礎学習が行われていたのかを知ることができる。
教師たちの持っている信念や哲学の上に、どのような基礎が積み上げられ作品に影響を及ぼしているのかがよくわかる展示だ。
作品を延々と見続けるだけではなく、作品の裏側や、そこに至るまでの時間経過を感じる事ができた。
感想
今回の展示内容で特に印象に残っているのは、「紙による素材演習」というもの。
一枚の紙を「切る・曲げる・折る」の3つの技法のみを使用して、様々な形を作る演習。
世界大戦の真っ最中だったというのもあり、物資が不足する中で取られた演習だった。
条件は「一枚の紙」「3つの技法」という至極シンプルなものだが、そこから生まれてくる作品が基礎学習の域を完全に超えている。
高松市美術館のホームページにも作品が載っているが、その作品はまだまだ序の口で、もっと巨大な作品や、作品を目の前にしても技法が不明な作品もあった。
シンプルな条件の中で、考えに考えた結果、答えなんて無数にあるのだと実感する。
何だかすごく感動的だった。
また、レタリングの技法も興味深かった。
展示の中には陶器や織物、家具までジャンルが多岐に渡っていたが、
その中でも一番好きだったのが「印刷・広告」だった。
文字ひとつ取り上げても、大きさや配置を研究し尽くしている。
アルファベットも、よくよく考えてみると「直線と円」の組み合わせでしかない。
その直線と円をどのように配置するのか、考えている過程が垣間見える。
バウハウスの印刷物がとても好きなのは「統率された美しさ」があるのかもしれない。
全てが整っており、しかし、遊び心を忘れないデザイン性がとても素敵に感じる。
「作品を創る」という事は、
「徹底した基礎」が根底にはあり、
「常に実験する心」が上に重なっていて、
「作品の美しさ」に繋がっているような気がした。
最近はネットで簡単に情報を得る事ができる。
もちろん、それは歓迎するべき流れであるし、その恩恵を受けて生きている。
しかし、それ故に「効率」というモノが重視され過ぎているように感じる。
「効率よく」という事は決して悪いわけではない。
でも、「非効率」の中に隠された「思考力」が奪われていないだろうか?
常に考えて、実験して、修正していく。
その先に「基礎に裏付けられた美しさ」が存在しているのかもしれない。
そんな事を考えさせられる展示だった。
会場入口の展示。
左右の椅子にもバウハウスの基礎が詰め込まれているし、座り心地も最高だった。